氷封世界
チャプター 1 · 34 items
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詩集#0
Phigros計画より
昔流浪人といふ者あり
洗礼を受けず
神を信じたらざりき
黄金かづらの茎の如く這い上がり
聖なる石に天貫き
剣持ちて宣告す
我は世を変ふ
天のつるはしに
地の氷をさながら消して見す
深淵に餓鬼の骨もあらず
ゆめゆめ長き道のりならず
垂るる髪
浅き微笑み
後世に意志を継ぎ
手動かし塔を建て
空の果てまで我は行く
----2089.10.27
詩集#1
逃げよう。
今となっては
一瞬にして消える虹も
何処へと逃げることができるだろうか
まだ何処にあるのだろうか。
人を魅了する花の香、
あの世へと消えていった残響、
明晰なる思考の海洋、
うつろだけが集う夢の中。
そんな場所は
私の故郷。
詩集#2
凍り付く世界が、溶けていく。
五神鳥が日を追ひ、光は風携はりて詩作る。
春が鳩の帰りを求め、剣は鞘より出せたりて、収むること難し。
峰の上に出会ひ、かたみにまもりて、風を浴ふ。
告ぐべからぬこと心に隠し、高き岩に立つ二人。
晴れし空を見上げ、琴が終はりを告ぐなまめかしき旋律を奏づ。
山の上、風聞きて、さても言ひきや、何を語れりや、小さき子の笑ひ声に隠れてきこえざりき。
故人常に言へり、海に溺ると骨もなくなり、覆水は盆に返らず。
ただ迎へに来る人と帰りて、新しき暮らしを始めむ。
詩集#3
ポッポッポッポ。
泡ぶくぶく。
うまき魚に昆布を添へ、美味しき汁に魂戻る。
興じて笛を奏づれど、すがらに聞きてそろそろ飽きき。
乗り物に氷原の上疾走し、笛音ばかり響き渡る。
遠方より来て、ただ一晩の休みにこころゆく。
詩集#4
人類にとって身分はこんなにも大事なものなのか……
生き物には名前が必要だ。
死んだものにも名前は必要だ。
生きているのは
死ぬためであり
特に何の願望があるわけでもない。
死んだものには欲望がない、
ただ蘇ることを望むのみ。
詩集#5
詩が書けない……
春は、
万物が蘇る季節。
詩集#6
光。
流浪時代、
鳶の尾から花が咲き、
光芒万丈、
闇を貫き、
雲を裂く。
ペン型ボイスレコーダーAlpa
鳩専用のペン型ボイスレコーダー。白色で、右側にmopeのシールが貼ってあり、背面には鳩と隼の名前が刻まれている。
補助型人工知能Alpaにゃんが搭載されている。Alpaにゃんに自己意識はないが、時々変な声を出す。
Clues
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり1
鳩はこれを使って思いついたアイデアや聞こえた音を収録する。そのため、Alpaには大量の変わった音声サンプルや黒歴史が保存されている。
Gino:「これ、一体何を記録してるんだ?」
鳩:「秘密は友達にしか教えちゃいけないって兄さんから聞いた。あなたは私の友達なの?」
Gino:「さあな。君はどう思う?」
鳩:「良いお友達は親友の秘密なんて聞いたりしないって兄さんも言っていた。あなたは良いお友達ではないのだ。」
Gino:「な……なんだその屁理屈は。」
鳩:「すごいでしょ!」
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり2
鳩が十歳の誕生日にもらったプレゼント。ずっと大切にしてきたもの。
:あと少し…
:あ。
【重い落下音】
:大丈夫?
:平気、ちょっと擦れただけ。処理してくる。
【彼は蛇口を開けた。洗面ボウルに溜まった水は熟睡中のAlpaを映し出した。】
:あともう少しだ。
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり3
Alpaにゃんは兄の大学の卒業制作の一つで、普通の猫より少し高い知能を持っている。普段はペン型ボイスレコーダーの中で寝ているが、時々鳩の個人端末に顔を出すこともある。
鳩:今日のAlpaは静かだね。
Gino:多分寝てるな。ふふ...新人よ急げ、サボってんじゃない。レポートをさっさと書き終えて帰るぞ。【わざとらしく厳粛な表情】
鳩:おお、晩御飯何にする?
Gino:ビスケット以外なんでもいい。
鳩:了解!
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり4
鳩は最近、ひとつ奇妙な趣味ができた。それは録音した日記の周波数を変えて、作品として保管すること。何か奇妙な音が聞こえたら、それを解析してみるといい。
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり5
深夜、サボっているAlpaはこっそりペン型ボイスレコーダーから抜け出したが、廊下で絵を描いているクズミに掴まえられた。そして二人は愉快かつ幻想的な夜を過ごした。
クズミ:どこの猫ちゃんなの?かわいい~
Alpa:ワン!
クズミ:????犬の鳴き声?
【クズミは何か悟ったように、Alpaを抱き上げて大声で言った】
クズミ:わかった、これは運命だ、お前こそが神がくれたアイデアの女神だ!
Alpa:ニャー~~
【クズミの足の上に押さえられたAlpaは悲鳴を上げた。この人間の女の子は一体何を言っているんだ。一方、クズミの脳内ではアイデアがどんどん湧いてくる。小さなノートはやがて黒猫Alpaの冒険話でいっぱいになり、猫ちゃんが出会った仲間たちはまるで実在するかのように、クズミの脳内で次々と浮かび上がった。クズミは感じた、これはすごい絵本が出来そうだ。】
ペン型ボイスレコーダーAlpa・手がかり6
迷宮の入域スタンプがあまりにも美しすぎて、鳩は思わずそれを保存した。
鳩:alpaなんでも記録計画起動!
【ボイスレコーダーの中にいるalpaはこれに対して少々不満があるようだが、立て続けに襲ってくる眠気のせいで夢の国に帰っていった。】
【録音】山風
- 時間
- 10m32s
山谷の異常な風音を記録したもの。それは猛獣の鳴き声のように、始めは高揚として長々と、途中で静まり返るもまた高々に鳴り響く。終わりは淡々として長引き、精霊の囁き声のようで、世界の終わりを告げる鐘のよう。だが、外来者が訪れたせいで、音はぱたりと止まった。
第七小隊の紋章
鳩が第七小隊に入隊した証。絵柄は雪原に咲き誇るアネモネ。
【録音】火鍋
- 時間
- 5m21s
鍋からぶくぶくと湯気が出ている。ミリセンチの魚の薄切りが鍋の中で茹でられている。その白い魚肉はいと美味しそうにネギやパセリと一緒に湯の中を泳ぎ、水面に波紋を描いた。箸でこの肉を掴んで口の中に送ると、溶ける感じは室外の寒さを忘れさせてくれる。一口スープを飲むと、心もこの温もりの中に溶けていく。
【録音】睡眠
- 時間
- 21m05s
Unlock conditionCondition: EZ · 5
光はまだ灯っている。窓を開けると、月は白い花の如く雲の中に隠れ、遠方の塔から流れてくる寒風は流れ星を連れて屋根の雪を吹き落とし、小屋の中に襲い掛かかる。寒さに震え、私は窓を閉めて布団の中にこもった。個人端末を取り出し、以前に録音したものを流す。私は随分と長い間、筆を動かしていない。
仕事をやめた私は窓の外を見ると、薄々空の異変を感じた。
そこには一つの塔が立っている。塔とは言えないかもしれない。その直径は端が見えないほど長く、てっぺんは雲の層まで届いている。霜を羽織る神獣の住処のようで、人界を見下ろす鯤鵬のようなもの。
その塔はいつからそこに立っていたんだろう……
昨日までは、なかったのに。
Clues
【録音】睡眠・手がかり1
Ginoのリズム感のある寝息を聞いて、私は思わず拍子を打った。いち、に、いち、に……優しくて静かで、とっても落ち着く寝息だ。
「まだ寝てないのか?」
拍子がピタリと止まる。起きてしまった!
「夜更かしするなって……言っただろうが……」
Ginoが動いたせいでベット全体がぶらぶらと揺れ始めた。床板を突っついてみたら、動きが止まった。
なんだ、寝言だったのか。
はぁ~~うぅ……眠くなってきた。
また明日にしよう。
では今日の日記はここまで。おやすみ。
【録音】雪踏み
一握りの綿のような繊維状のものを掴んだ、山の向こう側から風に乗って漂ってきたものだ。踏んでみると緩衝材のプチプチが破裂する音がする、人の体温を奪う以外大した使い道もないようだ。Ginoはこれを雪と呼んでいた。氷原に雪が降るのは久しぶりで、いい兆候らしい。雪が降るということは雲がある、雲があるということは水がある。水があるということは気温が上昇し始めている、山の中の凍った湖も溶け始めている。もうしばらくたつと、魚たちが暖流に乗って水底から上がってきて、上流で繁殖の準備をする。彼らが水面から飛び出して水しぶきを上げ、機敏な体を動かして空中でその片鱗が命の虹を描くと、来年にまた新たな魚がこの氷原で生まれる。
「半月後の魚狩り祭、君は絶対気に入るよ。」
両用バイクTrophon
Ginoが愛用する雪陸兼用バイク。ほかの偵察隊員のものとは異なり、Dlyro隊長によって改造された作品の一つ。スノーバイクの華麗なキャタピラーとスキー板が付いているが、ボタン一つでスキー板を格納し機動性に優れた陸用バイクに変身できる。
Clues
両用バイクTrophon・手がかり1
鳩は隊長と仲が良い。他のメンバーはそれを羨ましく思っている。
Carl:隊長はあの新入りの女の子を随分気に入ってるみたいだね。
Theo:言われてみれば確かに。可愛いからか?
Carl:君も可愛くなりたいかい?
Theo:変なこと言うな。【真っ赤になる】
Carl:君さ、魚狩り祭の時に隊長に告白してきなよ。君が隊長を好きだってこと、誰にでもわかるよ。
Theo:俺は……
【遠くにいる隊長をちらりと見ると、隊員たちと楽しく仕事の話をしていた。Theoはしばらく考えてから何か決意したようだ。】
両用バイクTrophon・手がかり2
偵察隊員たちにとって、バイクの側面にある花の模様は重要な意味を持っている。Ginoが入隊したばかりの頃もそれについて頭を巡らせた。花模様の設計は精巧で、一目でそれが秘めている暗号を見破った人はまだいない。
両用バイクTrophon・手がかり3
逃亡中、Trophonの二つのバックミラーはブラックホールに吸い込まれた。
両用バイクTrophon・手がかり4
屑拾いの協力のもと、新しいバックミラーとタイヤに取り換えて、トランシーバーみたいなやつをも搭載した。
Kouma:test、test、trophon号聞こえるか~
鳩:Trophon聞こえています!次の指示を。
Kouma:Start your engine!
鳩:top gear!
Gino:おいおい、君たち興奮しすぎだろ。
鳩:一周走るのに付き合ってよ、Gino!
Gino:わかったよ。掴まえろ、風に飛ばされんなよ!
【Trophonエンジン全開、鳩は座っているこのデカブツの獰猛な叫びが聞こえてきた。ついに両足を地面から離れ、遠心力による強烈な無重力感に襲われた鳩は、慌ててGinoの腰を掴んで、こっそりと瞼を閉じた。そして、二人は石林(フゥードゥー)の中へ消えていった。】
両用バイクTrophon・手がかり5
Trophonはコンテナの中に預けてあるため、先に第三層へと到着した。倉庫の管理員であり、アマチュア発明家でもあるブランダの実験品となってしまった。おかげさまで不安定な飛行能力を得た。
Gino:言っただろ、これは俺のバイクだ。必要な証明書とかも全部ここにある。どうして渡してくれないんだ?
ブランダ:倉庫の規定により、ここで二ヶ月以上留まっているものは、駅長が発行する証明書をもらった上で、保管費を納めてから初めてこのバイクを引き渡すことができるようになる。だから、駅長が帰ってくる前に、このバイクを引き渡す権利は私にはない。
【ブランダは新聞紙で顔を隠し、陰でGinoと一緒に来た鳩を観察している。小娘は髪の毛をいじっていて、何を考えているかは全くわからない。彼はそのバイクを取りに来る人がほんとにいるなんて思わなかった。もし改造されていることを見つけられたら、職務を失う程度では済まないはずだ】
両用バイクTrophon・手がかり6
半年が過ぎ、Trophonはマザリノ境界から掬い上げられた。飛行機能は妙に安定性を増したが、核心となる動力モジュールがひどく壊れたため、GinoはTrophonをメカニックのFuliに預けて修理をお願いした。
「直せそうか?」
「エンジンが完全にいかれてるね。新しいやつに取り換えないと。」Fuliは懐中電灯をしまい、コンコンとTrophonを敲きながら言う。「どう?原子力ってやつを試してみないか?」
「メンテが面倒じゃなければ何でもいい。」
「おし、そこに座っとけ、すぐ終わる。」
GinoはFuliの腕を信じているが、その「すぐ」という言葉が信じられなかったため、コートを持って駐車場をうろついた。時は正午、タイタンの空にはうっすり緑色の靄がかかっている。目に入る車はどれも色鮮やかさを失っているが、一台のサファイアブルーのスポーツカーがGinoの目に留まった。
この車にはきっと知られざる物語がある。従来の経験がそう訴えている。
Ginoは修理場に戻ると即座に訊ねた。「外に置いてあるロードスター67はいくらだ?」
「確か20GBと言ってたっけ。でもお前さん、宇宙船の免許は持ってるのか?あれは外殻がロードカーなだけで中はほぼ改造されてるぞ。」
「ああ、昔は持ってたな。輪廻した後に引継ぎに失敗してね。」
Fuliは黙々と笑った。あんなに時間をおいて引継ぎできるわけがない。
「お前さんのルームメイトならきっと持ってるだろ、彼女に聞いてきな。本当に買うっていうなら今すぐ売りつけるよ。」
補給物資のビスケット
とてもとても不味いビスケット。毎週、知られざる方法で空から偵察隊基地に投下される。補給物資の一部らしい。ついでにビタミンCを摂取できる素晴らしいチリソースもついてくる。
Clues
補給物資のビスケット・手がかり1
パイプ迷路に入って三日目、鳩はポケットから一袋のビスケットを取り出し、食べるかどうか迷った。結局、二人はチリソースをつけてこの最後の食糧をいただくことにした。
梆笛
雪原で唯一の楽器。Ginoの故郷の宝物。
Gino:故郷と言っても、隣の偵察隊のことさ。氷封紀元(グラシアリズ・エポック)以来、人類は楽器を作らなくなった。俺の笛は七百年にも渡って長く存在し続けた歴史的な宝物で、唯一無二のものだ。
鳩:そんな宝物なら、なんでGinoが持ち歩いてるの?
Gino:師匠はこう言ってた。笛が長い間感動と旋律の恩寵を受けない限り、ほかの楽器と同じ、氷原の中に消えてしまう、と。だからよく吹いて練習しろっていつも言ってたよ。それこそが笛を守るための唯一の方法だから。
鳩:そうなの?
Clues
梆笛・手がかり1
115がGinoにあげた手がかり。開けてみると、塔の中のものと似たような梆笛だった。
【録音】鶯の翅
- 時間
- 3m42s
壁炉の中で仮想の黄色い炎が踊っている。楽人は梆笛を箱から取り出して、曰く、今日は喜ばしき日、一曲演奏すべき、と。
聞こえ来る声は暁を告げ、春目覚め、万物蘇り、鴬鳴く。鴬鳴いては、翼広げて高々と風に乗り、あしたの到来を告ぐ。あしたを告げ、友垣を呼び、春を迎ふ。鴬見ると、枝に新たなるつぼみ芽生え、白梅美しく咲きたりて、分れて流るる泉川、花の茂みに踊る魚。鴬が笑い、翼に積もれる雪を払ひそれを広げ、やがて飛び立てり。
宿舎の鍵
鳩とGinoの宿舎の鍵。鳩は普段、帽子の内側に入れている。
Gino:鳩、ドアを開けてくれ。ちょっと物を取って風呂に入るから。
鳩:おかけになった電話番号の主はいま装備を換えているところです。またおかけなおしください。
【部屋の中から重いものが倒れたような大きな物音がした。それに続いて断熱扉の向こうから鈍い音が次々聞こえてくる。めちゃくちゃにされた部屋の惨状は容易に想像がついた。】
Gino:ポッポ、お前絶対着替えてないだろ!
鳩:私の名前はポッポじゃない!
【ドアが開いた。シャツだけを着ている鳩が、左右を見回してからGinoにいくつか服を放り投げた。秘密裏に取引をしている路地裏の闇商人みたいに。】
鳩:はやくお風呂に入ってきなさい。十時前には絶対に帰ってこないで。
Gino:俺のクローゼットを探ってたのか?【Ginoは鳩をじっと見つめる。鳩の着ている服が自分の作業服であることに気づいた。】
鳩:ふん、私はあんたのパンツなんかに興味ないんだからね。
【鳩はバンとドアを閉めた。その風圧にGinoは目を細める。あれ?彼女、何か口を滑らせてなかった?】
エンリョウの角
無限深淵(エンドレスアビス)から這い上がってきたエンリョウの体から削り取った柔らかい角質。氷原にある食材の中でも上品なもので、魚水晶饅頭の皮の原材料である。
レールショットガン
第七小隊が使う武器。隊員たちはこの弧型の銃砲身デザインをとても気に入っている。
【録音】魚籠
魚狩り祭で鳩が手に入れた装備、エンリョウの肋骨と皮でできている。防水性がとても優れていて、大収穫を迎えるために不可欠な装備の一つ。
【録音】魚芝居
- 時間
- 5m21s
狩人は準備万端、しかし水の中を泳ぐ魚たちはこれを知らない。矛の鋭い先端を水に向けると、次の瞬間、水しぶき立ち、川に弱肉強食と鮮血の色が染まった。この光景は人々を考えらせる。もし、このような収穫は大自然が人類に与えた恩恵ならば、それは捕食される生き物たちにとって何を意味しているのか。それが表しているものは、抗うことのできない宿命なのか、それともいつ災害が起こるか予測できない世界に生きていることなのか。
髪
氷原エンリョウに連れ去られたTheoの存在を証明できる唯一のもの、Carlが死ぬ前にこれをDlyro隊長に渡した。
「逃げろ……もう時間がない……何者かが……深井戸から……」
【録音】ブラックホール
- 時間
- 1m01s
これは絶望に満ちた水溜まり。風が吹いても波が立つことはない。
万物を使い尽くしても、新世界を作り出すことはできない。
「記録:三月最後の一日、氷原は前代未聞の大災害に遭った。塔の上から舞い落ちる白い灰が戦っている戦士全員を燃やし、遠い地平線から巨大なブラックホールが空に昇り、何の作為もない臆病者たちをも連れ去った。私たちは氷原の上を走っている。隊長の言った通り、萨里(サリ)山に行く道だけが塔の守りを受けている。」
【映像】脂肪球
Unlock conditionScore ≥ 840,000 on Engine x Start!! (melody mix) IN
逃亡中に鳩が撮った奇妙な写真。たくさんの脂肪でできた黒い球が、彼らの主の体からゆっくり離れて、新たに降った雪の上に不規則な黒色の痕跡を残した。この不可解で浮世離れしたものに、鳩は馴染みがあるようで、ないようで……。
錦嚢
DlyroがGinoに渡した錦嚢。中には彼女の最後の命令が書いてある。
「鳩と最初に出会った場所に行け」
Clues
錦嚢・手がかり1
Unlock conditionScore ≥ 773,000 on Reimei HD
異想のDlyroがGinoに渡した錦嚢。塔組織についての情報が記されている。
「塔組織は百年近く前から存在している。様々な研究機関に潜り込み、先生と教え子といった繋がり、あるいは学会を通じて仲間を増やしてきた。構成員たちはほとんど誰にも読まれないような学術誌をいくつも発行している。そうした雑誌はネットにはほとんど出回らず、組織内での情報のやり取りにだけ使われる。執筆者名は大抵構成員の偽名だ。偽名や偽の身分は、生物のラテン語名に架空の地名を組み合わせて作られる。
塔組織には決まった集合場所も時間もない。構成員の本当の身元を突き止めるのも難しい。Phigrosほどの大がかりな実験であっても、実行する者同士が互いを知らないことも珍しくない。普通の人間が人脈を辿ってこの組織に接触することはまず不可能だ。
だが、一つだけはっきり言えることがある。お前は以前、塔組織の中核人物の一人に会っている。ただ、それが誰なのかまでは分からない。お前と接した僅かな時間だけでは、得られる情報がまだ曖昧すぎるんだ」
病衣
Unlock conditionScore ≥ 950,000 on an HD chart
フェンデスが一番嫌いな服。彼が偵察隊の制服をもらったあと、この病衣は軽々と捨てられた。
花柄のナイフ
Unlock conditionScore ≥ 950,000 on an HD chart
ashが雪原の上で目を覚めた時、手に持っていたナイフ。ashの話によると、フェンデスと出会う前はまだ家にいて、妻と一緒に料理を作っていた。
フェンデス:あんたが置かれている状況は大体わかった。
ash:本当にわかったのか?
フェンデス:わかったって!無駄なこと言わないでついてこい。
【映像】深井戸
Unlock conditionScore ≥ 950,000 on an HD chart
二人が流浪し始めた5日目。大量の氷原エンリョウに遭遇し、四周が崖となっている石壁の上まで来てやっとそれらから逃れることができた。ashが地面に座ると、ようやく周りは静まり返った。頭上には魔物万千、足元は深淵万丈。他の脱出方法を探さねばならないと思ったashは周りを見回すが、暗闇が無限に広がっているのみであった。深淵の湖底を見つめるが、そこには自分の姿が映っているのみであった。ashは実家の古い井戸を思い出した。仲間に押されてその中に落ちていったあの日も、こんな景色だった。唯一違うのは、あの井戸には子供一人も入ることができなかったが、今のこの「井戸」は一人の魂でさえ埋め尽くせないほど大きい。
「脱出する方法、みーつけた。」
【録音】光
- 時間
- 1m13s
伝説によれば、星の欠片が大気の中で燃えると美しい弧線を描くという。そして、無数の欠片が同時に降り注ぐとき、それらは天へと続く光の橋となり、彼方にいる人たちのメッセージを届けてくれる。光の橋に足を踏み入れた者は、かつて一人もいない。それは、最下層に刻まれている禁忌だから。もし試みれば、その光の彼方にもう一つの世界があることを知ってしまうだろう。
「行こう、Gino。」
「新世界へ!」
ログイン権限:Saturn
リンボたちが使うシステムのログイン権限。隊長Dlyroがブラックホールに吸い込まれる間際、Ginoに残した。
Clues
ログイン権限:Saturn・手がかり1
【夜、仕事が終わった偵察隊の隊員たちは交流室で暇つぶしをしていた。隊長はGinoとソファーの上でお茶を飲んでいたが、ふと口を開いた。】
Dlyro:Ginoはさ、この世界が現実だと思う?
Gino:隊長?
Dlyro:急に何を言い出すんだって思うかもしれないが、お前はちっとも変だと思わないのか?
Dlyro:見たことも言ったこともないのに妙に思い浮かべてしまう言葉、詩、伝説、そして記憶。お前はそれらがどっから来たものか気にならないのか?
Gino:それは……答えられません……
【その夜、Ginoが眠りにつくことはなかった。】
0327討伐令
深井から湧き出た大量の魔魎を撃退するため、各偵察隊はエリートメンバーを集結し、討伐活動に参加した。隊長が参戦命令を受け取った後、チーム全員で出撃したが、Ginoと新人の鳩には参加させなかった。
魔革377
文字がびっしりと書かれている氷河魔魎の革。鳩がかろうじて読み取れたのは377という数字だけだった。今はAlpaにより解析中。
Clues
魔革377・手がかり1
“解析状況3%”
“確定済みの言葉:タワー、人形、夢覚め”
氷河美食会
「氷河美食会」は有名グルメ雑誌で、編集部のメンバーは世界各国から集まっている。編集長は第一救援隊の副キャプテンで、ユニークな調理人でもある(Dlyroによれば)。電子版を年間購読すると苟驼オイル5リットルが特典として付くため、Dlyroは部下のアカウント10個で購読している。苟驼オイルを普通に注文するよりもずっと安く済むから。
鳩:Gino、変だと思わない?
Gino:何がだ?
鳩:この雑誌の抽選、毎回Ginoが当選してるよ。
Gino:え?そんな事知らないぞ。
鳩:ほら、見て。
Clues
氷河美食会·手がかり1
第88号:唐辛子と蒟驼(ゴウダ)のソース和え
今回の取材中、我々はキャンプ47の蒟驼の生息地周辺でレベル1の異想公害を受けた灌木林を発見しました。調査によると、単葉互生で半木本性のこの植物は大昔に絶滅したはずの唐辛子であると見られており、異想公害によって復活したと考えられます。ここでふと、以前ある年配の職人が言っていた言葉を思い出しました。『太古の昔、トウガラシと塩は漬物作りに最高の材料だった』と。唐辛子を発見したいま、古代のレシピを復元したい思いが再燃しました。そこで、夜の休憩時間を利用して地元の蒟驼猟師から成獣を1頭譲り受け、試しに調理してみることにしました。結果は大成功。細かく刻んだトウガラシと蒟驼の肉が見事に調和し、唐辛子の辛味と肉の甘みが互いを引き立て合っています。仕上げに少量の苷の粉末とゴマを加え、見た目も美しく整えました。それでは、今号の表紙を飾った料理『唐辛子と蒟驼のソース和え』を改めてご紹介しましょう。
毎号恒例の読者プレゼントとして、抽選で5名様にこちらの料理をお贈りします。当選者は裏表紙で発表されます。裏表紙:おめでとうございます!幸運な読者のGinoさん!賞品は3日以内にキャンプまでお届けします!!
鳩:ほら、適当に一冊選んでもGinoが当選してる。
Gino:それは知ってるよ。その号だけ当選したんだ。
鳩;えー、単に運が良かっただけなのかな。裏表紙を確認しよう。
鳩:Ginoの名前ばっかりだ。なんだこれ?
氷河美食会·手がかり2
第93号:丐狖(カイケツ)の眼球
異想の物は我々に災いをもたらす存在であり、排除されるべきものです。しかし丐狖のような動物は、実際には何の害もなく、むしろ「これといった取り柄がない」と言えるほどです。普段は川辺でじっと動かず、肉もわずかしかありません。もしレベル3の異想公害でなければ、きっと駆除対象リストから外されていたことでしょう。編集部も丐狖料理の投稿を受け取った際は驚きました。「よりによってなぜ丐狖を食べるのか?」と思いましたが、それが眼球料理だと分かると皆感嘆の声を上げました。この丐狖の眼球をニンニク醤油の味付けで食べる発想は、先日の合同掃討作戦に由来します。エンリョウの大群が去った後、投稿者は河原の戦場跡の片付けを行っていました。ある支流に差し掛かった際、彼はふと足を止めました。そこには、眼球を失った数百匹もの丐狖が氷上に倒れており、河原一面にエンリョウの狼のような足跡が残されていたのです。「狼が通った河原にはニンニクが生える」という言い伝えを思い出した投稿者が土を掘り返してみると、なんとその通りニンニクが見つかりました。そこで彼は「このニンニクと丐狖の眼球を一緒に食べたら、どんな味がするだろうか」と考え生まれたのがこの料理です。なお、少量の米酢をかけるとより一層風味が引き立つとのことです。
おめでとうございます!幸運な読者のGinoさん!賞品は5日以内にキャンプまでお届けします!!
Gino:???
鳩:は!
Gino:俺、目玉なんて食べたことないぞ!
鳩:そういえば異想の物の目はどれも光るんだから、丐狖の目も光ってるんだろうね。
【GinoはDlyroの展示ケースに目をやった。その中央に飾られた光る眼球の標本を見て、彼はある考えに至る。】
Gino:なんかこれ、怪しい気がするな。
氷河美食会·手がかり3
第45号:騾馬タンの焼きパンサンド
魘馬を操る技が次第に失われつつある今日、私たちは幸運にも、神技『融通』の最後の継承者、第七小隊のDlyro隊長にお話を伺うことができました。【映像資料】Dlyro隊長による馬術の実演【ファイル欠損――修復中――失敗。ザザッ……】
reseting process completed
馬料理の話になると、Dlyro隊長は、遠い昔の名物料理『ロバ肉の焼きパンサンド』を紹介してくださいました。第八十一小隊の駐屯地付近に新たに現れた騾馬は、おそらくロバと馬の交雑種で、この料理のロバ肉の代わりに使えるそうです。
草地で大量に繁殖する騾馬には私たちも頭を抱えていました。そこで隊長が勧めてくださったのが、皮も肉も骨も余すところなく利用すること。食べられるものは食べ、使えるものは使うのです。騾馬の肉に辛いソースをつけて七、八分ほど焼き、小さな焼きパンに詰めて食べるのが一番だそうです。なかでも隊長が強調されたのは、騾馬の真髄は舌にあるということ。この部位が最も美味で、まさに逸品中の逸品なのです。
本誌のスタッフは、半数以上が第八十一小隊の出身です。そもそも『氷河美食会』はこの巡回小隊から生まれたものでした。レシピを教え、直々にご指導くださったDlyro隊長への感謝を込めて、今後は読者プレゼントの抽選を行うたびに、一つを第七小隊への贈り物として取り置くことにしました。無償でご協力くださった隊長へのささやかなお礼です。
鳩:隊長への贈り物だっだんだね。
Gino:謎も解けたし、そろそろご飯にするか。
【鳩がふと何かに気づく】
鳩:あっ、今日ってちょうど美食会の発送日だったよね。
Gino:なんか...嫌な予感がするな。