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ネオンサイン

チャプター 5 · 31 items

On this page詩集#18 人・影・世

詩集#18 人・影・世

770/06/04 · By deathMark

橋の上、岸の辺、人影おろか、 小児船のかじを取り、 波を押し広げて進む。 思いは尽きぬもの、 故人の足元、蓑衣の濡れ跡。 夜に夜に雨降り、人世の蹉跎なり、 砕玉に定めあり。 影を灯すは魚灯篭、 悔い悔やまれし陽炎。 顧みると、静寂は山火のよう。

詩集#19 空の青

770/06/28 · By deathMark

悲しや、お皿からから。 悲しや、お腹すかすか。 水清し、空の青を跳ね返す。 川清し、泳ぐ魚見つからず。 空清し、鳥の影見当たらず。 山清し、人の気感じ取れず。 命の輝き、木々のみが持つ。 くちをし、実る時あらず。 悲しや!

詩集#20 演劇

770/07/09 · By deathMark

終わりのない宴を催そう、 終わらない歌を歌おう、 待ち続けては、 懐かしむこともある。 夢中になりすぎないかと聞く。 馬鹿げた大騒ぎ、 妄想のために雨に濡れ、 言葉じゃ表せない絶望。 彼は笑って答える。 誰も逃れない、ドラマツルギー。

Poem Reimei

770/07/21 · By 碎数研

枝に触れる月光、星々の輝き。 長い夜の冷寒、空に盤踞する霞、 草の葉に滴れる霜。 ご覧になれ、風に吹かれる夜、月に照らされる山、 途方に暮れる旅人、霧に満ちる前路。 言葉は悲し、一人で彷徨い、 寂しい影に、灯される障壁。 笛を鳴らし宿を求める、 孤独の音が夜に響く。 幾度に目が覚め、時はすでに早朝。 霞を纏う、ぼやけた日の出。 大地を照らし、雲を払う。 星月が隠れ、万物が目を覚ます。 鳥の鳴き声、明るく鳴り響く。 希望に満ちる朝焼け、朦朧たる黎明の訪れ。 荷を背負いまた旅に出る。 人々の語り合いを聞きながら、 明るい日へと、長い道を歩き出す。

解読:Spasmodic

770/08/30 · By Kuzumi

木でできている脆い小屋の中で、黒いレインコートと仮面の姿をした何人かが瓦礫の中に座り込み、両腕を忙しなく動かしている。それは意味をなさない手話、コミュニケーションを取っているようにも見えるが、ただ気持ちを発散しているようにも見える。物語は空間の中で転々として粒子のように自由に拡散した。ある種の経験や情緒が広がり、絶望がこの狭い土地を覆う。 彼女は光を浴びるコケ地に立ち、視界には何かの「象徴」が映る。それは人々の心から溢れ出して記憶の雪原を飲み込み、もうすぐこの街にやってくる。もとより支離滅裂の宇宙にさらなる不安定性を課そうとしている。時間はすでに間に合わない、彼女は歩きながら考える。しかし昔は強烈だった魔法も今となっては火花を散らすくらいしかできない。どうやって逃げるか、彼女は精一杯考えた。しかしここから離れる方法は思い浮かばなかった。 あの人を思い出した、しかしまた頭を振った。あの人は過去の記憶を失っているようだ、今では何をすべきかも彼女が教えてやる必要がある。しかし、あの人だけが持つ「守護」の権力は、この逆境を乗り越えることができる唯一の力だ。 Hint1:missとbadの合計が7未満の状態で尊師 ~The Guru~或いはReimeiの任意難易度をクリアせよ。 Hint2:NYA!!!(Phigros ver.)、JunXion Between Life And Death(VIP Mix)、cryoutのいずれかをコンボ切らずにクリアし、かつ尊師 ~The Guru~をA以上でクリアせよ。

詩集#21 悲痛

770/08/21 · By deathMark

弯曲、玄黄、心慌ただし。 蒼穹、それは天網の如し。 寂しき荒野、 見渡せば急ぐ川のみ流れる。 一人の足跡、行く先は日の下。 地の草を食う牛羊、 残雲の中に輝く瑠璃、羽織に身を包む仙人。 その美しき目に、疲れが消えゆく。やがてそのものは姿を消し、光なきところに帰られる。 気づけば全てを忘れたことに、心痛む。

詩集#22 自由

770/08/30 · By deathMark

未知なものは、どれほど遠くにあるのだろうか。 枷をつけた人々は世界を歩く商人のようで、 彼らが探しているものは、美しいのだろうか。 足を踏みとどまれば、現実の外に反転する幻境、 歌って乗り越えよう、 始める権利は、すなわち自由である。 私はあなたに誓う、未来に起こるすべては不確定なものではない。 運命は、人によって定められている。 踊る人形はパンドラの箱を破って斬新な世界へと旅立つ。 Leave all behind, No time to hesitate, 空は晴れている。共に未来に向かおう。

宿のカードキー

770/06/04 · By 鳩

蓮渡が営んでいる、出稼ぎの人々向けの小さな宿。料金は安く立地はやや辺鄙だが、地下鉄の駅には近い。ブランダは自身の規則違反をGinoと鳩に口外されないよう、この宿で借りていた部屋を二人に提供した。

掲示板

770/06/04 · By 蓮渡

宿のフロント右手の壁には、大きな木製のボードが掛けられている。その真上には、赤い粘着シートを切り抜いた「掲示板」の文字。 一年中居座るネオンの湿気に晒されたことで、板の塗装は下のほうから蛇行するようにひび割れ、その下でわずかに膨らんだ木片をのぞかせていた。蓮渡は見るのも嫌になり、様々な付箋とカラーペンを揃えてフロントの脇に置いた。すると、幾日も経たぬうちにひび割れは付箋に覆い隠された。黒い枝に、色とりどりの葉が芽吹いたかのようだった。 いつの宿泊客だったか、帰り際に小さな籠いっぱいの刃物や紙、ペン、糊を残していった者がいた。それを機に、掲示板は付箋という形の制約からも解き放たれた。今では宿泊客が思い思いの着想を披露する場所になっている。近所の食べ歩きの感想、気ままな詩句、意味もない叫び、切り絵に広告まで何でもありだ。肝心の部屋の不具合を知らせる書き込みは、いつしか脇を飾る添え物になっていた。

Clues

掲示板・手がかり1

770/06/04 · By 鳩

近くで見つけた屋根付きの駐輪場にバイクを置き、二人は道草をしながら宿へ向かっていた。着いた頃には、もう夕方だった。 Ginoは傘を閉じ、入口で何度か振って水を切ると、鳩に手渡した。きちんと畳んで入口の傘立てに入れておくよう言い添える。鳩は両手で大事そうに受け取り、神妙な顔で頷いた。ところが、Ginoが宿の中の様子を見に行った途端に辺りをうろうろし始める。 Ginoが戻ってきた頃には、鳩は既に掲示板埋め尽くし大作戦に熱中していた。足元には、色とりどりの紙くずが小さな輪を作っている。 「Gino、見て!」鳩は振り返り、ハトの形をした紙切れを掲げた。 黒い縁が切り残されていて、ずいぶん雑な仕上がりだ。頭の部分には、赤と黒のボールペンで平たい丸が四つ、ひとかたまりに描きつけてある。Ginoはしばらく見つめて、ようやくそれが鳩の髪飾りだと分かった。 「これじゃお前の仕業だってバレバレだろ...。」 「ポッポはそんなヘマしないもん!」 …… 「あとどれだけ待ってればいいんだ?」Ginoは、鳩がくしゃくしゃに束ねた傘を傘立てから取り出し、形を整えて戻した。 「もうちょっとだけだから!」鳩はつま先立ちになり、付箋をできるだけ高いところに貼ろうとしている。 見かねたGinoは鳩の手から付箋を受け取ると、腕を伸ばして一番上にぺたりと貼った。それから鳩の背中を押し、さっさと部屋へ連れていった。 付箋に何が書かれていたのかは、また別の話。 子供ふたりが言い合いながら二階へ上がって行くのを見ながら、蓮渡はため息をつき、沸かした湯を手に厨房から出てきた。 さっき「彼女」はずいぶん長いこと掲示板を見つめていた。それは蓮渡が落ち着かないほどに。蓮渡は茶を淹れると、立ち上がって掲示板を一通り確かめてから、何枚かの付箋を選んで剥がした。 「特に目に留まらなかったのか、六道虹の暗号が解けずにひとまず置いておいたのか。それとも、分かっていながらあえて口にしなかったのか?」 茶葉が湯の中で舞い、浮き沈みしている。雨脚は強く、空気が籠っていた。蓮渡はフロントの籐椅子に戻ると、窓を少し開け、濃く出すぎた茶の香りを逃がした。
掲示板・手がかり2

770/06/16 · By Gino

【お知らせ】 深夜にノックが聞こえてもドアを開けないでください。現在詳しい状況は分かっておらず、当館ではお客様の安全を保証いたしかねます。 ここ二日ほど、掲示板には苦情が増えていた。大半は、真夜中に宿の部屋を一つずつノックして回るいたずらのせいで気味が悪くて眠れない、というものだった。 Ginoは、昨夜会い損ねたあの人物と関係がある気がした。だが、証拠らしい証拠はない。これ以上調べるには、まず宿の主人から話を聞く必要があった。 「蓮渡さん、ここ数日の夜中の騒ぎに何か心当たりはあるか?」 蓮渡は首を振った。髪は乱れ、彼も騒ぎのせいでやつれているようだった。「今のところ、いたずらとしか言いようがない。警察に届けても、どうにもならないだろう」 「この宿に煙草を吸う人は?」 「大勢いる。共用部分は禁煙だから、たいてい入口の外か、自分の部屋で吸っている」 「メンソールの煙草だ。ある晩、宿の中でその匂いがした」 「ほう?香りつきか?長く泊まっているのは無骨な連中ばかりだ。ああいう甘ったるいのを好むとは思えないが……。つまり、夜中にノックして回る人物のものだと?」 「断言はできない。でも、妙に覚えがあるんだ」 蓮渡は黙り込んだ。愛用の湯呑みを片づけ、代わりに蓮唐草の文様をあしらった手のひらにちょうど収まるくらいの茶杯を二つ取り出す。七分目まで茶を注ぐと、二本の指を曲げて前へ押し、一つをGinoの前に滑らせた。 「狙いは俺だ」蓮渡は目を伏せ、苦笑した。「命に関わる話だからな。でなければ、こんなところにずっと籠もってはいない」 彼には殺し屋と面と向かって交渉する機会が必要だった。そしてGinoこそが、その機会を作る鍵になる。 「もちろん、何事もないふりをするのは性に合わない。相手が誰なのか本当に知りたいなら、今夜やって来たとき、捕まえるのを手伝ってくれ」
掲示板・手がかり3

770/06/18 · By 鳩

黒煙がもうもうと立ち込め、辺りでは時折宿泊客の悲鳴が上がっている。Alpaは鳩を背に乗せ、廊下を駆け抜ける。出口がようやく見えてきた。揺さぶられる中、鳩がどうにか薄目を開けると、ちょうど一枚の付箋が目に入った。隅には、燃え移った火の粉がくすぶっている。 【今夜、館主は不在です。ご用の方はこの下に用件を残してください。】 …… 消防隊員が宿から出てきて、鎮火したと告げた。宿泊客たちはようやく胸をなで下ろす。煙を逃がすため、指示に従って外から窓をできる限り開けていった。 鳩は鼻を摘みながらそっと中を覗いた。家具という家具に分厚い煤が積もり、床には泥水がまだらに広がって、とても見られたものではない。掲示板はとりわけ被害がひどく、もう使えそうになかった。鳩は、そこにあった食べ歩きガイドが惜しくてならなかった。 「お嬢ちゃん、落ち着いて。ドア枠の上にも煤が積もってる。髪に落ちたら大変だよ」 鳩は慌てて首を引っ込め、声のほうを見た。消防隊員が宿の入口の段に座って休んでいる。防火服を脱がずにいるのは、雨に濡れたくないかららしかった。 「火が広がったのは一階だけだ。煙探知機が作動したあとはほとんど水で消し止められたよ。上の部屋は大して傷んでないから、暗くなる頃には使えるだろう」 鳩は素直に頷き、そっと横を向いてあくびをした。夜の半分は眠れずじまいで、今は宿にも入れない。どうしたものかと困っていると、端末にGinoからメッセージが届いた。 Gino:【位置情報】 Gino:こっちは片づいた。ここで落ち合って、朝飯にしよう。 鳩:了解!
掲示板・手がかり4

770/06/18 · By スルダン

【お知らせ】 先日の館内火災は、調査の結果、電気湯沸かし器の温度調節機器の故障が原因と判明いたしました。 皆様にご不便をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。被害を受けられたお客様につきましては、今月分の宿泊料を全額免除いたします。皆様が快適にお過ごしになれますよう、お祈り申し上げます。

六色の虹

770/06/12 · By Dlyro

隼:六人目だ。 【コートの内ポケットから、古びた写真を一枚取り出す。そこに写っているのは蓮渡の顔だった。】 Dlyro:ずいぶん容赦がありませんね。お、知った顔だ。 隼:これが最後だ。 Dlyro:分かってる。 Dlyro:それにしても、昔は友達だったんだろ。ここまでする必要あるのか? 隼:規則に逆らえば、いずれこうなる。それくらい覚悟していたはずだ。お前にとっても悪い話ではないだろう。ごほっ――ごほ、ごほっ! Dlyro:あとどれくらいだ? 隼:もう幾日もない。彼が戻ってきた。 Dlyro:それも規則か? 隼:彼は自由だ。我々はそうではない。

夜の帰り路

770/06/15 · By Gino

煙草の香りが立ちこめ、戸の隙間から雨へ流れる。 ふと気づき、 傘を投げ捨て駆け寄れど、故人は見えず。 夜気は冷たく澄みわたり、夜半の夢から覚めるのは誰か。

救急箱

770/06/18 · By 蓮渡

必要なものが一通り揃った小さな救急箱は、どの温かな家にも欠かせない。蓮渡は、出しておくと場所を取ると思っていたため、厨房の戸棚に押し込んでいた。

Clues

救急箱・手がかり1

770/06/18 · By 蓮渡

真夜中、蓮渡はこれまでの逃げ回るやり方を変え、灯りを消して真っ暗になった厨房に座り、招かれざる客を待っていた。 どん、どん、どん。 聞き慣れた三度のノック。蓮渡は端末を起動し、隣の物置に隠れているGinoへ打ち合わせどおりに知らせを送った。だが、電波の表示は確かに最大なのに送信中のマークはくるくると回り続け、ついには赤い感嘆符に変わってしまった。 空気が、僅かに変わった。 一つ目の手が駄目なら次だ。蓮渡は身を屈めて流しの下へ潜り込み、底板と側板の継ぎ目から細い糸を引き出した。 Ginoが今いる物置は、六道虹が人を匿うために用意したものだった。厨房とは壁を一枚隔てており、中には一人が半年食べていけるだけの食料があるし、飲み水は壁の中に通した細い管から得られる。敵が来る前に、この予備の連絡手段が使えることは確かめていた。糸はその管を通り、向こう側でGinoの髪の一房に結びつけてある。軽く引けば、それで知らせが届くはずだった。 蓮渡は糸を引いた。次の瞬間、糸はぷつりと切れ、埃の中へ落ちて見えなくなった。 再び、ノックが響く。 「ふぅ...。」 蓮渡は一度深呼吸し、無理にでも目の前のことに意識を集中させる。Ginoからの反応がない理由は二つしかない。既に始末されたか、こちらの動きが向こうへ伝わっていないかだ。今回は「顔見知り」同士の争いなのだから、前者の可能性はほぼ考えなくていい。ならば、残るのは後者だけだ。 「標的が外に知らせようとする行動を全て無効にする。まったく、便利な能力だ。」蓮渡は何度も厨房を見回した末、戸棚の奥から救急箱を引っ張り出し、使えそうなものを選んだ。気づかぬうちに五体もの分身を失ったが、この能力にやられたのなら無理もない。幸い、それ以外の行動は妨げられないらしい。障害物を置いて相手を足止めすることも、逃げ出せるだけの穴を開けることも。 他の「可能性」があるのなら、この窮地を切り抜けられる可能性だってあるはずだ。
救急箱・手がかり2

770/06/18 · By Dlyro

「はっ、今回はようやく部屋を片っ端から当たらずに済むわけだ」ノックを終えると、Dlyroはフロントの脇へ戻り、箱からメンソールの煙草を一本抜いた。慣れた手つきでライターのやすり車を親指で弾く。しゅっ、しゅっ、と二度擦ると、小さな炎が立ち上がった。 相手はそう遠くにいない。ほんの数歩先の、あの部屋の中だ。記憶が正しければ、湯沸かし室を改装した厨房だった。標的の居場所さえ把握できれば、どれほど助けを求めようと他の誰にも伝わらない。Dlyroには、標的が部屋の中を行き来しているのが感じられた。諦めずに未だ足掻いている。追い詰められた相手に手を出すのは得策ではない。もう少し待つことにした。 厨房から、がさごそと物音が聞こえてきた。その音は外の雨に溶け込んでいく。それから、ぱちりと灯りがついた。温かな黄色い光がドアの隙間からゆっくりと漏れ出し、ぼんやりと中へ招いているかのようだった。 「観念したのか?」 Dlyroが指先でフィルターを軽く揉むと、中のカプセルが潰れ、仕事前の最後の一服に深い香りが広がった。フロントから厨房までの数歩を、彼女は落ち着いた足取りで進む。中にいる人物はひどく張り詰め、彼女の歩みに合わせて、同じ距離を保ったまま後ずさりしていく。一歩、二歩。窓に突き当たり、次第に二人の距離が縮まっていく。 一階の窓にはどれも格子がついていることをDlyroは事前に確認済みだった。道具一式と一時間そこらがなければ外せはしない。おまけに、親切に修繕までしてやったのだ。 そんなことを考えながらドアノブを握り――その熱さに、反射的に手を離した。手を押さえ、半歩下がってから改めてあの「灯り」を見つめる。明るさのむらも、目に見えるちらつきも、笑いを堪える悪童のように相手を侮った彼女を嘲っていた。 「やってくれるじゃないか!」 Dlyroはかえって愉快そうに笑うと、身を捻り錠を蹴り壊した。ドアが強引に開かれたことで入口を塞いでいた籐椅子はばらばらに砕け、燃え盛る破片となった。蓮渡は厨房の台に足をかけ、腕を振り上げて天井板の隅を叩き割ると、大人の男がちょうど一人通れるほどの排煙ダクトが露わになる。Dlyroを振り返る蓮渡の深紅の瞳は、見下しているようにも、あるいは挑発にも見えた。そして躊躇うことなく体を後ろへ反らし、厨房の外へと身を翻した。 「ちっ!」 一歩踏み出した途端、足元がぬるりと流れ、Dlyroの重心が揺れ奪われる。蓮渡が床に何を撒いたのかは分からないが、ひどく滑るうえ、炎に炙られて鼻につく草木の渋い匂いを放っている。彼女は素早く体勢を立て直し、二、三歩でほとんど足元の感覚を戻すと、足を緩めることなく後を追った。
救急箱・手がかり3

770/06/18 · By Gino

蓮渡の合図を受け、Ginoは物置から勢いよく飛び出した。ちょうど前方左手の戸口に、白い髪の先が消えていくのが見えた。次の瞬間、ドアが激しく閉まる。その激しい音が、思い出に囚われかけていたGinoの意識を引き戻した。二歩で一気に駆け寄り、ドアノブに手をかけようとした途端、燃え盛るドアが轟音とともに倒れ、危うく下敷きになるところだった。 渦巻く黒煙が火の粉を巻き上げて辺りに散らす。火の粉は古い電線の裂け目から散る火花とぶつかり合い、床いっぱいに広がった熱い油へ落ちてはじゅうじゅうと音を立てていた。 Ginoはぎゅっと目を瞑ってから、煙に刺される痛みを堪えて中を見た。厨房の火勢は強いが、燃えているのは主に壁際の細かな物だった。炎の明かりを頼りにすると、床一面の汚れの中から足跡はすぐに見つかった。黒く粘ついたそれは、排煙ダクトが覗く天井の隅の大穴へと続いていた。足跡の向きはどれもばらばらで、長く擦った跡さえある。それでも一本の線として辿れば、ドアから裂け目までほぼ一直線の道筋になっていた。 雨の中では足跡は長く残らない。今を逃せば、この天然の証拠隠滅担当に全て洗い流されてしまう。蓮渡が命を賭けて自分に進む先を示してくれたのだ。そう悟ったGinoは、少しだけ迷った末、鳩の端末へ大急ぎでメッセージを送った。それから足跡を辿って雨の幕へ飛び込み、追跡に加わった。 「これでポッポが起きてくれるといいんだが。」

サンカヨウの標本

770/06/18 · By 鳩

サンカヨウは、水に濡れると花びらが透き通る、雨の中に佇む隠者のような花だ。蓮渡は厨房の窓の外、軒下で二鉢育てていて、雨が激しい間はしばらく屋内へ避難させている。 火事から大切な草花を救ってくれたお礼に、蓮渡は花の季節が終わらぬうちに何輪か摘み、標本にして鳩に贈った。 通り道に転がっていた鉢を起こして脇へ寄せただけだったというのは、ポッポだけが知る秘密だ。

【映像】裏切り

770/06/20 · By クズミ

闇の中、老若男女のかすかな声が不意に響き、遠ざかっては近づく。周囲の僅かな灯りが揺れ、声に合わせて明滅する。 「来たぞ。裏切り者が帰ってきた!」 「ブランダ、あの廃品め。奴は我々を裏切った!」 「生かしておくな。回収しろ、解体しろ、破壊しろ!」 「ネオンの雨音の一つ一つが奴の裏切りを物語っている。奴は裏切った。それは明白な事実なのだ!」 「大地の震え、川のうねり、蝶の羽ばたき。波という波が、奴の裏切りを示している!」 「奴は大きな過ちを犯した!スルダンに情報を流したのだ!」 「スルダンは回収される。奴は回収される!」 「規則だ。奴らは存在の規則に背いた。秩序を裏切ったのだ!」 「だが、あのお方を連れ戻したのは奴だ――」 「奴がいなくてもあのお方は戻られたはずだ。こうして戻られた以上、スルダンは回収せねばならない――」 「矛盾の塊どもめ、お前たちの言葉は何もかも嘘だらけだ!あのお方は我々の首領を殺した。初めから、お前たちが待ち望んでいた者こそが本当の裏切り者だったのだ!」 灯りが消え、砕けた太陽が広間を隅々まで照らす。闇の中の声は巨人に喉を締め上げられた。怒りと絶望に満ちた声だけが響き、やがてそれも闇へと消えた。再び明かりが灯ると、暗闇の中で議論が再開される。 「尊師は死んだ。スルダンより先に死んだのだ。」 「ならば新しい首領が必要だ」 「だが、スルダンであってはならない!」 「なぜいけない?」 「スルダンも死ぬからだ。」

ブランダの告白

770/06/20 · By クズミ

要約: これは否認と悔恨、脅し、恐怖、絶望に満ちた告白である。崩壊の瀬戸際にある一人の「人」が、世界の規則に最後の抵抗を試みている。彼は誠実な人間だ。ただ、思い違いの中に生き、そこから抜け出せずにいる。 出会う相手を誤り、使命を誤り、支払う代償をも誤った。彼は終始、自らの心に忠実だった。駅の倉庫管理者として一貫して務めを果たし、そして最後の客を迎えるために、本来尽きるはずだった命をさらに延ばした。だが道理を超えて生き延びたことで、身の程を越えた望みを抱くようになった。運命の束縛も、迫る死からも、既に逃れたのだと思い込んだ。 その罪を洗い流せるのは、ネオンに降り続く雨と、彼自身の魂のあり方だけである。

Clues

ブランダの告白・手がかり1

770/06/20 · By クズミ

「二人と別れてから、私は朦朧としていた。彼らの過去の出来事が絶え間なく私の頭を襲い続ける。二人がなぜ生きていられるのか、私には分からない。過去の恐怖に覆われ、いつ滅びるかもしれない未来を前にして。私は騙されていた。こんな暮らしが永遠に続くと思っていたのだ。塔の礎は人の心のように揺るがぬものだと」 「私たちは死ぬ。みんな死ぬんだ!」 「あの虹を見つけろ!もっと上の世界へ逃げるんだ!」 「あの二人を探せ――六道虹は間違っている。三会も間違っている。いま規則を破らなければ、何もかも手遅れになる!」

【録音】ネオン美食図鑑

770/06/28 · By 鳩

時間
24m02s
ネオン!美しき常夜の街!ピクセルタワーの美食の中心地!!本日、ポッポとGinoは美食の激戦区として名高い百花大通りに来ていまーす!【効果音:うおー!!】 【Ginoは周辺の地図を調べている。興奮する鳩をちらりと見てから、首を横に振った。】 Gino:遊びに来たわけじゃないだろ…。階層の守護者を見つけてここを出るのが目的だからな。 分かってるってば!歩きながら探せばいいじゃない!さあ、街へレッツゴー! 【鳩はGinoの袖を引っ張り、あちこち連れ回そうとする。】 Gino:でもな、俺たちデータを大して持ってないんだぞ。ここの物価は結構高い。 あ……。【しばらく黙る】じゃあ、おいしいもの探そうよ。食べ物ならそこまで高くないでしょ? Gino:そうだといいな。【ため息をつく】 みなさーん、こんにちは!究極の美食家・鳩です!今日はネオンの名物料理を食べに来たんですが、深刻な資金不足により、大根団子の揚げ物しか買えませんでした。しかも、お店の人に怒られちゃいました……。 【Ginoが揚げたての団子を持ってくる。数えると、ちょうど二人でお腹いっぱいになる量だった。】 Gino:俺はあんまり腹が減ってないから少しでいい。 私?私は……じゃあ、私もちょっとだけ。残りは…夜に取っておく?【鳩は団子を見て唾を飲み込み、未練を残しながらも半分に分けるのはGinoに任せた。】 【Ginoは困ったように笑ってから、いくつかを包んで取っておき、残りには店主いわく「ネオン風味」の調味料を振りかけた。】 わあ、ありがとうGino!ご覧ください!こちらがネオンの軽食の一つ――大根の揚げ団子です!きつね色のおいしそうな見た目に、たまらない香り!一口かじると……げほっ、げほっ!辛い!Gino、これ何かけたの、げほげほげほっ―― 【Ginoは水を差し出し、咽せて涙目になった少女の背中を軽く叩く。それから店主にもらった小さな調味料の瓶を見た。どうやら唐辛子の粉をかけすぎたらしい。】 でも、やっぱりおいしい。

Clues

【録音】ネオン美食図鑑・手がかり1

770/07/19 · By 鳩

ネオンはちょっと変わった街です。毎日雨ばっかりで、ポッポまでカビが生えそうだけど、おいしいものへの愛は止められません!おいしいものがあるところに究極の美食家・鳩あり!そして、究極の相棒Ginoも! 【イェーイ!!!!】 ねぇねぇ、Ginoも何か言ってよ!【鳩がGinoを揺さぶる。Ginoは仕方なさそうな顔で付き合う。】 Gino:ええと……Ginoです。 【雨音が大きく、Ginoの声は聞き取りづらい。】 はぁ、もういいや。ねぇGino、ネオンって団子の他にはどんなものがおいしいのかな。街へ行こう!今回はお金の心配もないし! 【鳩はGinoを引っ張って歩き出す。ネオンは本当に広い。一周した二人は、結局一軒の料理店に入った。店主は二人を大歓迎した。】 店主:さあさあお二人さん、どうぞ中へ!何でも好きに頼んでくださいな!遠慮はいりませんよ! 【鳩はメニューを手に取り、じっくり眺め始める。隣に座ったGinoは窓の外の雨をぼんやりと見つめている。】 唐辛子の料理が多い。多すぎる……。ネオンの人ってこんなに辛いものが好きなんだ!タダならポッポも遠慮しないよ!すみませーん、これと、これと、これ、それからこれも……。 虹魚の頭の刻み唐辛子蒸し。ネオンの名物料理の一つです。主な材料は、ネオンの特産――短尾虹魚。尾の長さが頭の半分しかない、魚の頭を料理するための品種なんです。まず頭を二つに割って、ネギや生姜などを詰め、鍋で蒸し上げます。そこへ炒めた唐辛子のタレと熱々の油をかければ、できあがり!とろりと柔らかく、脂は乗っていてもしつこくない。程良い塩気と旨み、そして少しの辛さ。新鮮な身はなめらかで、口の中でほどけて、いつまでも余韻が残ります!!【食器の触れ合う音】それでは、究極の相棒Ginoさん!この料理についてご感想をどうぞ! 【Ginoは隣で、ビー玉ほどある魚の目を箸でつついていた。鳩に呼ばれ、きょとんとする。】 Gino:うん……おいしい、かな? やったー!それでは、本日のネオン美食の旅は、一旦ここまで! 【イェーイ!!】
【録音】ネオン美食図鑑・手がかり2

770/08/21 · By 鳩

今日もポッポがみなさんにネオンのおいしいものをご紹介します!でも今回はポッポ一人なんだよね。Ginoは別のところに買い物に行ってて、私は適当に何か食べてなって……。ええい、その話は後!引き続きネオンの美食を味わいましょう! 【賑やかなネオンの街の音】 うーん、ひと回りしたけど、何を食べようかな。ネオン暮らしも長いし、大きな料理店のおいしいものは大体食べ尽くしちゃったし……あれ、ちょっと待って? 【鳩は、路地に隠れるように建つ小さな料理店を見つけた。店から漂う香りに、鼻の利く鳩はたちまち引き寄せられた。】 ついに来ました!あのたまらない香りの正体です!一見普通の羊肉と春雨のスープですが、実はネオンで飼育されている特別な異想の一種、魚羊のお肉を使っています。この羊、皮の質感が魚の鱗みたいなことを除けば、見た目は全然魚っぽく見えません。でもお肉は獲れたての川魚のようにきめ細かく、つるりとなめらか。いつも食べている羊肉のこってりした脂や強い匂いとは全然違うんです。煮込んだお肉は柔らかくておいしく、スープはすっきりした甘みと旨み。普段よく食べる辛い料理ともひと味違います。春雨もお店の手作りで、食べ応え十分!一杯飲めば体の隅々までぽかぽかです!ネオンのおいしいものは、立派な高級料理店だけじゃないんですね。こんな小さなお店の料理もとってもおいしい! クズミ:まだここにいたの?教坊でずっとあなたを探してるんだよ。 【朝出かけるときにDlyroから言われたことを思い出し、鳩ははっとしてクズミを見た。】 クズミ:早く行こう! それでは今回のネオン美食図鑑はここまで!みなさん、また次回!【イエーイ!】ちょっと、そんなに早く歩かないでよ!Ginoのこと待たないと!

尊師グル

770/07/08 · By Gino

【リンボ百科】: 尊師グルはネオン層の守護者であり、この地を真に支配する者、魔女会議の指導者である。ネオンの回収業務を管理しており、統治局内でのコードネームは「ダイヤモンド・プリンセス」。原則として、尊師は至高の権力と無上の栄誉を有し、この地域の誰も逆らうことの許されない存在である。しかし、普段はアイリス大学で熱心に教鞭を執る「彼」の姿を見ることができる。一方で、教坊の老楽師も、大学の美術学科の教授も、尊師本人ではないという説もある。本物の尊師は別の身分で人々に交じり、世を楽しんでいるのだという。 伝えられるところでは、尊師の気性は移ろいやすい。信徒を弄んで楽しんだかと思えば、慈悲深い顔となり、知恵の道を授ける。古参の祭司の一部によると、尊師はほぼ全ての秘法を知り、声楽にも極めて深く通じているという。

ネオン

770/07/08 · By Gino

【リンボ百科】: 虹の上に築かれた無数の鉄筋コンクリートとネオンサインからなる巨大都市。全体は三つの「膜」に分けられ、上膜がアイリス、中膜がレンズ、下膜が黒衣と呼ばれる。一年を通じて雨が多く、激しい雨の降る日は年に350日にも達する。街の上空にはいつも黒雲が垂れ込めていて、昼夜の区別はつきにくい。ネオンは完全に都市化された生態系を持っており、動植物の種類は少なく汚染も深刻であり、人の手や機械による管理への依存が非常に強い。ネオンサインの一つ一つが、一人の住民の命を表している。看板は絶えず明滅し、その光が消えるとき、住民もまた命を落とす。

Clues

ネオン・手がかり1

770/07/08 · By Gino

アイリス地区は無限海から降る雨に直接晒され、その侵食を受けている。地区全体に水を吸収する地盤が使われており、道路の舗装材も全て多孔質である。雨水は幾重もの濾過層を通り、レンズ地区へ均等に送り出される。 レンズ地区には地上を流れる川が多い。並外れて目の良い者なら、川底の向こうに黒衣地区の街並みを見ることができる。 黒衣地区の中心市街には、洪水を防ぐため地上の河道がない。下水道の構造は極めて複雑で、市に登録されていない水路や地下建築が数多く存在する。街の外縁をいくつもの川が取り巻き、水面には上の地区から捨てられた未分別のごみが一年中漂っている。気温が上がると、夜には川から化学薬品のような臭いが立ち上る。川に飼育種が生き残っている形跡はないが、核汚染を題材にした芸術に由来する異想を目撃したという住民もいる。
ネオン・手がかり2

770/07/08 · By Gino

魔女会議はこの地で名高い教派である。住民の罪を軽くしてくれるという噂がある。教主は「虹の主」と呼ばれ、祭司たちは「尊師」の敬称で崇めている。この教えが信仰するのは虹である。一年を通じて雨が降るため、この地で虹を見ることは極めて珍しく、人々の憧れとなるのも当然だった。実際には、虹はネオンを離れて上の層へ向かう際に伴う現象であり、「回収」から逃れる象徴ともいえる。
ネオン・手がかり3

770/07/08 · By Gino

後暦242年3月7日、三会はネオンで抵抗戦争――虹の戦いを起こした。戦争は極めて長く続き、かつて三会の首領の一人であった隼が先民統一政府の元首となったとき、ようやく幕を閉じた。以後、ネオン層は先民統一政府の支配下へと戻った。後暦286年、統治局がピクセルタワーを引き継ぎ、ネオン層も新政府に属することになった。後暦300年、尊師グルがこの層の守護者に就任。ネオン層の役割は人類の拠点から異想の監獄へと変わり、それを基盤に第三次産業を大きく発展させた。

学生証

770/07/09 · By Gino

アイリス大学の学生証。Ginoが大学の芝生の近くで偶然拾ったもの。学生の氏名と所属学部・学科の他に、持ち主が好き勝手に貼ったシールがついている。Ginoはこれを使って無事に構内へ入ることができた。

「ネオンの声」のチラシ

770/07/09 · By Gino

「ネオンの声」は、アイリス大学の学生が立ち上げた放送サークル。宣伝のチラシは、何を伝えたいのか見分けづらいほど派手に飾り立てられている。Ginoが大学の構内を調べていたとき、通りかかった部員にこのチラシを無理やり押しつけられた。 学生:そこの君、うちのサークルを見においでよ! Gino:いや……結構です……。

サークル顧問名簿

770/07/09 · By Gino

Ginoがアイリス大学で見つけたサークル顧問の名簿。大半の顧問の名前と担当授業が記載されている。最新の改訂日は数日前らしく、一部の教員情報が変更されたようだ。

時間割

770/07/09 · By Gino

長く使われてきた時間割。サークル指導の予定がいくつか新しく貼り足されている。 Gino:先生、こんにちは。オペラサークルの以前の顧問の先生がどちらへ行かれたかご存じですか? 教員:副院長のこと?数日前に実家の用事で長期休暇を取ったと聞いたけど。何か用かな。 Gino:僕は隣の美食サークルの学生で、以前その先生に道具をお借りしたんです。どちらにいらっしゃるか分かりますか?お返ししたいんですが。 教員:そこまではちょっと分からないな……。 Gino:分かりました、ありがとうございます。お邪魔しました。 教員:いいんだよ。道具はひとまず大事に預かっておいて。先生もまた戻ってくるから。 Gino:はい、そうします。

【映像】ネオンの雨

770/07/09 · By 蓮渡

時間
5m03s
ネオンに晴れる日はなく、窓辺に腰かけ、ただ静かに雨の落ちるのを眺める。 既に黄昏時だったが、一日中薄暗いネオンはいつもとさほど変わらない。辺りに立ち込める水気が肌へ染み込み、湿り気が街の空気を隅々まで満たしている。雨は銀の帳となってネオン全体を覆っていた。遠くの建物は雨の幕に隠れ、ぼやけた輪郭の一部だけを覗かせる。看板の光がかすかに明滅し、降り落ちる雨の軌跡を映し出す。雨水は地面の孔を通って、アイリス地区の地下へ染み込んでいく。行き交う人々は傘を差し、急ぎ、あるいはゆっくりと歩く。その傘の連なりが、街路を泳ぐ龍となっていた。 豪雨は永遠に続き、虹は容易に姿を見せない。それでもネオンの人々は虹を待ち望んでいる。 窓の外、雨脚は麻糸のように絶えることなく垂れ下がる。部屋の中では人が声を潜めて語らう。 「蓮渡さん、何を見ているんです?」 「雨を眺めてるだけだ。何でもない」

百花教坊

770/07/09 · By Gino

【リンボ百科】: 百花教坊は表向きには名高い音楽専門学校であり、ネオン層の大小様々な楽団へ絶えず人材を送り出している。だが実際には、魔女会議、そして後に成立した三会の本部であり、ネオン層の大小あらゆる事柄を陰から動かしてきた。その実態が明るみに出ると、学校には物見高い観光客が殺到した。事態を受け、階層の守護者ダイヤモンド姫は階層全体に緊急告知を発し、三会は既に百花教坊を離れたと宣言した。それでも人気は衰えず、多くの劇場がこの地へ移転し、ネオンならではの劇場街が生まれた。

紐飴

770/07/09 · By 鳩

「またミント味だ…。」 鳩は紐状のグミを噛みながらぼやいた。クズミに魔女会議の本部へ連れてこられ、茶を一杯、グミを一袋もらって、午後いっぱい座っている。一体どの色に味覚を惑わされたのだろう。そう首を傾げていると、長らく姿を見せなかったクズミがようやく現れた。 「尊師が、もうすぐ死ぬよ」まるで今晩の献立でも告げるように、クズミは平然と言った。「会いに来たんでしょ。なら、ついてきて」 もちろん何のために来たか忘れたわけではない。それでもクズミの強引さに鳩の心は反発した。行きたくないと、本能が告げていた。初めて崖から突き落とされる鷹の雛のように。 「どうして死ぬの?」 「本当は分かってるんでしょう」 まただ。何もかも、自分に関係があるかのような言い方。私は何かクソゲーの続編でもやらされているの?同じ主人公の続投なんて、今どき流行らないのに。 「私、行きたくない」 「もう着いたよ」 景色が切り替わった。救急用のベッドに老人が横たわっている。体は痩せ細り、顔に血の気はない。病に膨れ上がった腹には排出する力もなく、汚物が詰まっていた。不意に、穴の開いた漁の袋を叩くような咳をする。次の瞬間には吐いたものを喉に詰まらせて死んでもおかしくない状態だった。咳が収まると筋肉が緩む。老人は目を固く閉じていたが、瞼がかすかに動いていた。まだ僅かな意識は残っている証だった。 「おじいさんなんだ。スルダンと同い年くらいだと思ってた」鳩は思ったままを口にした。 「見た目の話なら、今朝まではそうだったよ」クズミは付け加えた。「老衰で死にかけてるの。鳩、あなたのお兄さんの隼は、もう限りなく死に近い」 鳩はベッドの傍へ歩み寄ったが、ますます分からなくなった。「私の兄さんなのに。でも、こう見ていても、二人の昔のことが何一つ思い出せない」 「あの人が、その過去そのものなんだよ。あなたが忘れてしまった過去」 「じゃあ、あなたは誰なの?」 「誰にでもなれるよ。ただ、あなたじゃない」

【映像】土の丘

770/07/12 · By 鳩

舞台の左から、白い仮面の一団が十二人。転げ、戯れ合い、けらけらと笑いながら中央へ進む。応じるように右から現れたのは、赤い斥候の一団。鳳凰の羽根の帽子を被り、藤蔓を身に纏い、左足と右足とを縛り合わせる。鉄の鎖が人々を繋ぎ、一隻の戦船を形作る。舞台の中央へ、頭を剃った小坊主が一人躍り出た。飾り棒を振り回し、ぴたりと構えを決め、大音声で呼ばわる。「来たのは、頭に三本毛の獅子、赤鬣将軍の手の者か?」 「いかにも、この俺様よ!」声は空から降ってきた。その姿は紫金の稲妻。赤々と燃える炎は胸より噴き、足は百丈の氷を踏む。木は燻り焦げ、黒い炭が食らいつき、雷光は瞬く。長槍は首を振り、金音を響かせ、自在に躍る。臥蚕のごとき太眉がうねり、小鼻の溝に息が籠もる。真っ赤な大口からは、うおう、と低い唸り。なんと凄まじい鬼の形相か。 言うが早いか、刃が交わった。双方が打ち合い、火花を散らす。兵士の群れが次々に押し寄せ、二つの波がぶつかっては消えてゆく。一夜にして、土の丘は千年分の成長を遂げた。二人はその固い斜面に立っていた。しかし、一方にはもう首がなかった。 若きは波立ち、老いたるは緩やかに。人影は散り薄れ、風に煙り、砂は霞む。駱駝追いが長く三度呼ばわると、赤い毛の獅子が土の丘から生え出した。見渡せば、また新たな時代が始まっていた。

PhigrOS記録:鳩

770/08/21 · By 鳩

Dlyro:フレンドになりました。早速チャットしてみましょう!(1:00) 鳩:隊長、こんばんは!(1:01) Dlyro:こんばんは[手を振る]鳩か?(1:02) 鳩:私だよ!(1:02) Dlyro:問題なく追加できたようだな。それじゃまた明日。おやすみ(1:03) 鳩:おやすみ、隊長〜(1:03) ——— Gino:ポッポ、起きたか?先に出るぞ(8:40) Gino:PhigrOSを見るのが11時を過ぎてたら、そのまま本屋へ行ってくれ。俺のことは探さなくていい(8:41) 鳩:あ、今起きた(9:56) 鳩:どこにいる?そっち行くね(9:57) Gino:まだ広場の辺りにいる(10:00) Gino:[位置情報を共有](10:00) ——— Dlyro:向こうに動きがあった。今は来ないでくれ。(10:32) 鳩:そっか[しょんぼり](10:32) Dlyro:情報は今朝Ginoに渡しておいた。そっちは「虹の再現」の日程は決まったか?(15:00) 鳩:クズミが月末だって(15:21) 鳩:私たち、本当に出られなくなっちゃったの?(15:23) Dlyro:今は尊師が行方不明だから、誰も出られない。クズミとは連絡を取り合っておけ。最近、魔女会議の動きが奇妙なんだ(15:25) 鳩:実は(15:25) Dlyro:どうした?(15:25) 鳩:何でもない……(15:26)

Clues

PhigrOS記録:鳩・手がかり1

770/08/21 · By 鳩

蓮渡:Ginoに連絡がつかない。どこへ行った?(19:01) 鳩:わかんない。まだ帰ってきてないよ(19:04) 鳩:なんで私とフレンドになってるの?(19:06) 蓮渡:……(19:06) 蓮渡:[フレンドレベル.jpg]なぜだと思う?(19:07) 鳩:ああ、あなたも昔の知り合いなんだ。どこか親近感があると思った(19:08) 蓮渡:無駄口が多いな(19:10) 蓮渡:今朝の捜索はどういうことだ。部下の手綱も握れなくなったのか(19:12) 鳩:「隼」があの人たちに残した仕事だもん。私じゃ口を出せないよ(19:14) 鳩:化けるの上手だね。その口ぶりで、やっとあなたがスルダンだって分かったよ(19:17) 蓮渡:このIDは何百年も使ってる。自分がボケたんだろ、人のせいにするな(19:20) 鳩:でもスルダンを狙っておいてあなたを捕まえるのは最後って、何かおかしいと思う(19:23) 蓮渡:そこが異想の殺し屋の限界だ。本質へ真っ直ぐには辿り着けない。あのDlyroはまだ概念が不完全なんだ。少し回り道をさせればまるで見当がつかなくなる。(19:25) 鳩:今、フレンド一覧にDlyroが二人とあなたが二人いる(19:26) 蓮渡:待ってろ。今三つ目のサブアカに切り替える(19:28) ———— 鳩:いま板挟みでピンチなんだけど(19:18) Gino:どうした?(19:20) 鳩:スルダンにGinoの居場所を聞かれたんだけど、スルダンを狙ってる殺し屋と一緒にいるって言っちゃっていいのかな(19:25) Gino:俺から話すよ。新しい隊長のほうは、もう仕事を降りたんだ(19:26) 鳩:そういえば、今気づいたけど隊長ともフレンドだった。しかもずっと前から(19:32) Gino:お前フレンド何人いるんだ?(19:34)

PhigrOS記録:Gino

770/08/21 · By Gino

Gino:自動転送?PhigrOSにそんな機能があったのか(19:27) Gino:待て、そもそもいつあんたとフレンドになったんだ?(19:28) 蓮渡:確信した。お前、同居人に毒されてるな(19:29) Gino:何のことか分からないが、さっさと本題に入ろう(19:29) 蓮渡:黒衣地区の集団暴動は「六道虹」が扇動したものだ。魔女会議はもう突き止めている。そっちに動きはあるか(19:31) Gino:俺が知る限りでは、ない。首領が鳩に代わってから組織全体が止まってる(19:33) 蓮渡:今のあいつが何を考えているのか、本当に分からん(19:34) Gino:本人にも分かってないんじゃないかな(19:35) ——— 鳩:いくらスクロールしても終わらない。これだけいるなら、兄さんもフレンドにいるはずだよね(19:36) 鳩:はぁ、見つからなかった(19:42) Gino:ラテン語名で探してみたらどうだ?HawkとかPeregrinusとか(19:44) 鳩:ほんとだ、あった(19:47) 鳩:なんで尊師グルのアカウントなの……(19:48) Gino:お兄さんはもうピクセルタワーにいないってことか?(19:49) 鳩:そんなはずない。兄さんの「倒影」を見たんだもん(19:51)

可能性

770/08/29 · By 鳩

私は可能性を探している。予見された一筋の虹を、黒衣地区に複雑に絡み合う血管の上で。 人々はネオンを築いた。この「眼」で虹を探すために。虹は、眼の外で光が屈折することで生まれる。人の眼は虹を生み出せない。その構造には虹が求める性質が備わっていない。けれど虹は、人の眼で見られ、捉えられ、感じられるものだ。観測者のいない虹は、その姿を失ってしまう。 やがて、ネオンは幻想の檻となった。人々は外にあるものを残らず取り払い、自らこの歪んだ社会の土台となって、その働きを一層弱めてしまった。 もしかすると、解放することが唯一の方法なのかもしれない。

錆色の金槌

770/06/06 · By 蓮渡

錆色の金槌は、六道虹の集会に入るための鍵であり、試験に合格した者だけが手に入れられる。柄の長さは六寸、頭部の断面は二寸×八分。全体にドット状の錆が浮いており、その模様は所有者の識別コードに対応している。

Clues

錆色の金槌・手がかり1

770/06/18 · By 蓮渡

【ネオン層の黒衣地区では、川の氾濫を防ぐため中心市街地に地上の河道を設けていない。一方で実際の水需要を満たすため、下水道網は極めて複雑に入り組んでいる。さらに、様々な歴史的経緯から市の記録にない水路や地下空間が数多く点在している。たとえば衆志広場の噴水の下にある英傑囲場。ピクセルタワー暦202年に造られ、外見は独立したプールの更衣室だが、正しい鍵で扉を開ければ、牛や羊があちこちにいる広々とした草原に入ることができる。】 【草原はしんと静まり返り、遠くの山並みは一面の雪化粧だった。蓮渡は蓮の地紋が入った深緑の唐服をまとい、根が絡み合ったような杖をついている。彼は牧民の身なりをした番人と、囲場の外に幾重にも連なる色とりどりの幡の下に立っていた。二人のそばには転送用の円形の台がある。】 番人:(行く手を遮る)おい、鍵を出しな。ちょっと見せてみろ。 蓮渡:(金槌を取り出す)どうした、何かあったのか。 番人:(模様をスキャンする)いやあ、なんでも亜空間のエクスポートプログラムが、うちの層を片っ端から走査してるんだと。タイムスタンプの狂ったデータを使って亜空間の中に浸透して、コアデータを盗むとかなんとか。だから入れちゃいけないんだ。あんたは問題ない、入りな。 蓮渡:浸透、か。歴史の「再演」のことだろう。(金槌をしまう) 番人:まあそんなとこだ。聞いてくれよ、今朝ここに当番で来たとき、転送台を降りたらブランダが外に立ってたんだよ。 蓮渡:ブランダ……あいつは回収されたんじゃなかったか。
錆色の金槌・手がかり2

770/08/02 · By 鳩

鳩:なんでハンマーなんかくれるの? 蓮渡:呆れた。 【鳩は以前の記録を確かめ、すぐに蓮渡の意図を理解した。】 鳩:今すぐ人を集めて、六道虹をぶっ潰してくる! 蓮渡:もう一回よく見ろ!
錆色の金槌・手がかり3

770/08/02 · By 鳩

鳩:すみません、六道虹の集会所ってここですか? 番人:看板を売りに来たのか?帰んな、六道虹はもう解散したよ。 鳩:えっ?でも…… 番人:どうせ暇だし、話してやるか。最近ネオンの空がどんどん暗くなってるだろ。あれは確かに六道虹の仕業だ。けどな、その後で「七」ってハッカー集団が出てきたんだよ。知ってるだろ、人はみんな逃げちまったんだからネオン層を残しといても仕方ない、いっそ全部ぶっ壊してマザリノ境界を早くヘブンへ行かせよう、死ぬならみんな一緒だ、なんて言い出してさ。上の連中はそれを聞いて大慌てだ。ヘブンにあるデータをまだ移しきってないもんだから、急いで援助を打ち切ったってわけ。 鳩:そんなことが! 番人:それだけじゃないぞ、いいか…… ………… 【鳩が集会所を出ると、更衣室では蓮渡がずいぶん前から待っていた。】 蓮渡:これで分かっただろ。 鳩:宣言します!悪党六道虹は捕らえられました!ネオンは全て正常!さぁ、まだまだ歌って踊って! 蓮渡:ふっ、さすがだな。

事件・虹の再現

770/08/31 · By 鳩

楼层守护钻石姬提交的报告附件,记录了虹再现事件的全过程。 但因为不可逆的数据损坏,我们只捕捉到钻石姬和其伙伴——疑似“莫比乌斯”者的对话。 “别走这么快,Gino,我看不清路。” “你在原地等我吧,找到灯就好办了。” “不会有灯的,前面也不会有,大家都走了。事到如今,也不瞒你了——” “你就是尊师咕咕。” “嗯?你怎么知道!” “挺好猜的。就算再迟钝的人,看到你打开的这条通道也该想到了。” “咕咕还想着给你留一个大惊喜呢,这下一点戏剧性效果都没有了!” “这也不能叫大惊喜吧!” “事已至此就不管那么多啦,Gino你走慢点呀,我要跟不上了!” “……咕咕。” “怎么又突然停下来了,Gino走累了吗?” “不,咕咕抬头,看那边。” “奇怪,刚才这里好像还没有这么亮呀……诶?那是?” “是彩虹,咕咕。” “……霓虹,天晴了?” 【林泊百科】: 770年8月29日,长夜带来的恐惧在霓虹蔓延,下二膜被暂时抛弃。诸多亚空间逃逸后,幽蓝边界只用了三天便到达最上层鸢尾,吞噬了导致霓虹阴雨连绵的异想要素。这一天,霓虹自虹之战起的五百多年,第一次迎来了晴天。

Not translated into English in the game yet. This is the original Chinese.